私が講師を務める後継者向け研修に、
知人の後継社長、高橋氏(仮名)をゲストにお呼びし、
事業承継の実体験のお話をしていただきました。
高橋氏は、大手商社に数年勤めたあと、
父親の経営する会社に後継者として入社。
入社後、高橋氏はすぐに
構造的な問題があることに気付きます。
当時、会社は工業製品の卸売業と
製造業を営んでいました。
メイン事業は卸売業。
年商は百億円超で、数千万円の利益を出している。
しかし、上流であるお客様と、下流である仕入先が
同一の大手商社というサンドイッチのような構造で、
その大手商社に牛耳られかけている。
製造業はサブの事業。
年商は数十億円程度で、1億円程度の赤字。
技術力と価格競争力はあり、なんとか生き残れば、
業界で残存者利益を得られる可能性が高いが
そのためには多額の設備投資が必要。
会社の内部留保はほとんどなく、
実質債務超過に近い状態。
もし、このまま手を打たないと、近い将来、卸売業は
大手商社に乗っ取られ、製造業は設備投資ができず、
ジリ貧になり廃業に追い込まれてしまうことが予想できました。
将来が見えない中、高橋氏はどうしたのでしょうか?
高橋氏は思い切って、親父に迫りました。
「社長にしてくれないなら、会社を辞める」と。
そして、弱冠30代前半で社長の座につき、
自ら企業の根本的な再構築を行います。
乗っ取られることが予想されるなら、
自分からM&Aを仕掛けてやると決意し、
M&Aを徹底的に勉強して、ブレインを雇った上で、
本業の卸売業をM&Aにより高値で売却することに成功。
その売却で得た資金で、会社の借入金を全額返済し、
製造業に設備投資を集中しました。
そして、技術力と価格競争力を活かし、
やめていく他社の事業を取り込みながら、
みごと業界シェアNo1にまで成長したのです。
現在、高橋氏は、毎年数億円の利益を出しています。
高橋氏は私の問いに答えてくれました。
「どうして、社長になることを決意したのですか?」
「このままでは、会社はだめになってしまう。
いいも悪いも私が社長になって再構築しなければ、
将来が無いと思ったからです」
「社長にしてくれないなら、本当に会社を
辞めるつもりだったのですか?」
「ええ。数社からうちに来ないかと声を
かけられていたので、本当に辞めるつもりでした。
大切な時間を 中途半端な後継者の立場で
過ごすことはできませんでした」
「本業をM&Aで売却して起死回生を図るという
アイデアがよく出ましたね?」
「もちろん、すぐに出たわけではありません。
会社の事業・財務を徹底的に分析をしました。
そして、ああでもない、こうでもないと
価値を生むためのシナリオを練りに練りました。
すると、ある瞬間に道が見えたのです」
最後に高橋氏から、将来経営者となる後継者の方々に
メッセージが送られました。
「私にとっては、後継者という立場は一つのツールの
ようなものです。自分の人生を価値あるものに
するために、活用できるものです」
「後継者の皆さんには、早く社長になることを
お勧めします。後継者としての中途半端な
立場の方がしんどいものですよ」
「しかし、社長の仕事というものは、派手なものでは
ありません。地道な仕事の積み重ねであり、
そこに価値があると思います」
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