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後継者に告ぐ 早く気付け!早く取り組め! ~事業継承の落とし穴~

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事業承継3段階その1    ボケボケの事業承継

日々の事業承継支援の実践の中で気付いたのは、
経営者と後継者が親子の場合、事業承継は、両者の意識や関係性から、
3つの段階(レベル)があるということです。


この3つの段階を低いレベルからわかりやすく表現すると、

レベル1「ボケボケの事業承継」の段階、
レベル2「オレオレの事業承継」の段階、
レベル3「ワクワクの事業承継」の段階

となります。


私自身が事業承継の支援を行う場合、経営者と後継者が
これらの3つのどの段階にいるかを把握し、
「ワクワクの事業承継」になるような働きかけを
するようにしています。


今回から3回にわたって、
この事業承継の段階(レベル1~レベル3)について
述べてみたいと思います。


まず今回は、レベル1「ボケボケの事業承継」についてです。


「ボケボケの事業承継」の段階の経営者は、ほとんど
事業承継について意識がありません。

なんとなく事業承継を
「将来のことだし何とかなるだろう」と思っている。

あるいは、
「業績も低迷しているし、どうせ俺の代で終わるかも」と
経営者としては無責任な姿勢が見受けられます。


また、この段階の後継者は、事業承継をあたかも
他人事のように捉えています。

事業承継のことは「親父が考えてくれているだろう」と、
親父任せにしている。

あるいは、「いずれ時期が来たときに考えたらいい」と
高をくくっている。

もしくは、「業績も悪いしあまり考えたくない」と、
事業承継について考えること自体を放棄しています。

このように、経営者・後継者の両者の意識や姿勢が、
「他者依存」、「無責任」、「現実逃避」であるため、
両者とも事業承継について真剣に考えることはなく、
当然具体的な行動を起こすこともありません。


もちろん事業承継の取り組みは、いつも先送りとなっています。

さらに、この「ボケボケの事業承継」の段階での
経営者と後継者の関係は、「ボケボケ無関心型」と
「ボケボケ仲良し型」の2つに類型されます。


●「ボケボケ無関心型」

経営者と後継者はお互いに対する関心が薄く、
行動を共にすることは少なく、ほとんど会話もありません。


●「ボケボケ仲良し型」

経営者と後継者は会話も多く、よく一緒に出かけたりと、
関係は良好です。

しかし、経営や事業承継などの重要な会話は
ほとんどありません。

つまり、親子としての関係は良好なのですが、
経営者と後継者としての関係や役割意識が希薄なのです。

「ボケボケ無関心型」、「ボケボケ仲良し型」のどちらにしても、
事業承継の問題は、水面下で悪化の方向に向かっているか、
取り返しのつかない状況に陥っていることが多くあります。

ところが、当事者自身は、それに気付かず、
いわば「ボケボケ」の状態にあるのです。


この段階の経営者・後継者に対しては、
このまま事業承継の取り組みを行わないと、
どのような事態が起こるのかを具体的にお伝えし、
危機感と主体者意識をもっていただく働きかけを行います。


そして、レベル2「オレオレの事業承継」、もしくは、
レベル3「ワクワクの事業承継」の段階に進んでいただくわけです。


私自身が、企業後継者であったとき、親父の会社に入社してから、
阪神大震災までは、まさに、この「ボケボケの事業承継」の段階に
いました。
 

経営者・後継者のみなさんは、この「ボケボケの事業承継」の
段階にいることはありませんか?


次回は、レベル2「オレオレの事業承継」について述べます。

 

事業承継3段階その2    オレオレの事業承継

今回は、レベル2「オレオレの事業承継」についてです。


私が事業承継の支援を行う場合、経営者と後継者が
3つのどの段階にいるかを把握し、「ワクワクの事業承継」に
なるような働きかけをするようにしています。

レベル1「ボケボケの事業承継」の段階では、
経営者も後継者も事業承継についての意識が薄く、
当然、事業承継について何らのアクションも取っていません。

水面下で物事が悪化の方向に向かっていても、
当事者自身は、それに気付かず、いわば
「ボケボケ」の状態にあります。



それでは、今回のテーマであるレベル2の
「オレオレの事業承継」について考えてみます。

この段階の経営者・後継者は、レベル1「ボケボケの事業承継」の
段階の経営者・後継者とは違い、事業承継に対して、
当事者意識を強く持っています。

これは非常によいことです。

しかし、その当事者意識のあり方が、自己本位になっているのが、
次回述べるレベル3「ワクワクの事業承継」と異なる点です。


レベル2「オレオレの事業承継」の経営者は、後継者に
事業承継を行うことの必要性を自覚しています。

しかし、会社を「俺のもの」と思う意識が強いので、
後継者が自分の思うような行動を示さないと、
それが許せず、後継者を押さえつけます。

「俺が、俺が・・・、俺でなければ」という感覚が強く、
すべて自分だけで仕切ろうとします。

事業承継の取り組みをする必要を感じてはいるのですが、
いつまでも後継者を「あいつは未熟」と判断し、
「やはり俺でなければ」と、実際は権限委譲をしません。

後継者がいろいろな提案をしても、聞く耳を持たず、
自分の気に入らないことはすべて却下し、フォローもしないのです。


この段階の後継者は、事業承継を我が事ととらえ、
将来、会社を経営していくのは自分であるという思いと
責任感を強く持っています。

しかし、自分の考えが唯一正しいと思い、
とにかく、どんな場合でも、「親父は古いし、間違っている」、
「やはり俺が正しい」と思いがちです。

そして、常に経営者の悪口を言い立てたり、会社を
批判することに終始します。

自分勝手な態度や言動により、経営者や周囲の協力が得られず、
やる気が空回りしていることが多いのです。


この段階の経営者・後継者の両者は、このように
当事者意識を強く持っていることは評価できるのですが、
とにかく、相手の立場を考えず、自分の立場からの視点しか
無いのが大きな特徴です。

両者の意識や姿勢が、「自己本位」や「唯我独尊」であるため、
両者とも事業承継について真剣に考えているのですが、
意見は噛み合いません。

ゆえに、事業承継は、なかなか順調に進まないのです。


このレベル2「オレオレの事業承継」の段階での経営者と
後継者の関係は、お互いに相手を受け入れない
殺伐としたものになりがちです。

常に口論をしているか、口を利けば口論になるので、
もはや口を利かなくなっていることもあります。

お互いに良かれと思っていることが、相手に認められず、
お互い大きなストレスを抱えてしまい、それが行き着くと、
最悪の場合、自分の立場を放棄したり、
相手を追放するという結末を迎えることもあるのです。


このオレオレ段階の経営者・後継者に対して、私は、
お互いが自己本位に自己主張し合っていても
ラチがあかないことを理解していただくことからはじめます。

自己本位の姿勢から脱し、お互いの立場の違いを
理解したうえでお互いが支援し合わなければ、
事業承継が進まないのは当然なのです。


私自身が、企業後継者であったとき、親父の会社に入社してから、
阪神大震災までは、レベル1「ボケボケの事業承継」の段階に
いました。

阪神大震災以降は、自分がなんとかこの会社を立て直さなければと
いう意識が芽生えましたが、親父を否定しまくる「自己本位」の
まさに「オレオレの事業承継」の後継者でした。


経営者・後継者のみなさんは、この「オレオレの事業承継」の
段階にいることはありませんか?


次回は、レベル3「ワクワクの事業承継」について述べます。

 

事業承継3段階その3    ワクワクの事業承継

今回は、レベル3「ワクワクの事業承継」についてです。


私が事業承継の支援を行う場合、経営者と後継者が
3つのどの段階にいるかを把握し、「ワクワクの事業承継」に
なるような働きかけをするようにしています。

レベル1「ボケボケの事業承継」の段階では、
経営者も後継者も事業承継についての意識が薄く、当然、
事業承継について何らのアクションも取っていません。

水面下で物事が悪化の方向に向かっていても、
当事者自身は、それに気付かず、いわば
「ボケボケ」の状態にあります。

レベル2「オレオレの事業承継」の段階では、
経営者も後継者も事業承継に対して、
当事者意識を強く持っていますが、
相手の立場を考えず、自分の立場からの視点しか
無いのが大きな特徴です。
両者の意識や姿勢が、いわば「オレオレ」の
「自己本位」や「唯我独尊」であるため、
経営者と後継者の関係は、お互いに相手を受け入れない
殺伐としたものになり、お互いがいくら頑張っても
ストレスばかりが増えるばかりで、事業承継は
なかなか進まないのです。



それでは、今回のテーマであるレベル3の
「ワクワクの事業承継」について考えてみます。

これが事業承継の理想段階です。


「ワクワクの事業承継」の段階では、経営者も後継者も、
事業承継の本質を掴んでいます。

その本質とは、すなわち、

経営者の役割は、価値あるものを後継者につなぐ。

後継者の役割は、価値あるものを経営者から受け取り、
それを再構築しながら、自らが価値を生み出していく。

事業承継を進める主体は後継者であり、
それをバックアップするのが経営者である。

ということです。


レベル3の経営者・後継者は、お互い事業承継について
当事者意識を強くもっており、かつ、その姿勢が
「自己本位」ではありません。

お互いに相手の立場を理解し、相手を受け入れ、
相手を支援する姿勢をもっています。


経営者は、後継者の微妙な立場や感じている重圧を理解し、
後継者を精一杯支援します。

例えば、後継者に対して、価値を生み出す土台となる
後継者自身の意識・知識・行動を高めるきっかけを
つくったり、働きかけを行います。

また、会社の情報を開示するなど、後継者が価値あるものを
受け取りやすい環境を整えます。


後継者は、譲る側である経営者が感じる様々な期待や不安を
理解します。

そのうえで、経営者に対する甘えを捨て、自らが
主体となって価値あるものを受け取り、
価値を生み出す覚悟のもとに行動するのです。

ただし、経営者の気持ちに十分配慮し、不安を安心に変える
行動・言動をとるように努めます。


経営者と後継者はお互いに考え方の違いがあることを
認め合ったうえで、価値あるものを承継し、
未来を築くためにベクトルを合わせようと
お互いが努めるのです。

経営者と後継者がお互いの存在をありがたく思い、
お互いを理解し、受け入れ、尊重し、支援しあう関係が
出来ているのです。

それらの姿勢から、経営者も後継者も現在に感謝し、
未来に希望を持てる、以下のようなワクワクの関係が
醸成されるわけです。


経営者は、価値あるものを受け取り、生かし、
新たに価値を生み出そうとしてくれる後継者の存在を
好ましく思っています。

自らの夢、ビジョンを託せる後継者の存在が
頼もしいのです。
そして、オーナー社長の立場を渡すことによって、
人生における次のステージに登れることが楽しみなのです。


後継者は、これまで価値を生み出してきた経営者に尊敬と
敬意の気持ちをもっています。

そして、自分を認め、価値あるものを譲ろうとしてくれる
経営者に心から感謝しています。

自らの描く価値を生み出すシナリオを実践していくことが
楽しみなのです。


このように、事業承継において経営者・後継者とも、
事業承継の本質をしっかり掴み、当事者意識を強くもって
お互いが、相手の立場を理解し、相手を受け入れ、
相手を支援しようとする。

これが、価値あるものを承継し、価値を生み出す
「ワクワク」の意識と関係性といえます。

さて、経営者・後継者のみなさんは、レベル3
「ワクワクの事業承継」の段階に入っているでしょうか。

まだ、レベル1「ボケボケの事業承継」や
レベル2「オレオレの事業承継」の段階に留まっているとすれば、
事業承継も経営自体も良い方向には進みません。


経営者と後継者両者の意識と関係性は、事業承継において
最も基礎となる部分です。


今一度、見つめなおしていただければと思います。


⇒ 
レベル1「ボケボケの事業承継」に戻る
 

 

後継者が成功する    10のチェックポイント!

事業承継において、後継者が直面する課題はさまざまですが
共通の落とし穴が存在します。
後継者のみなさんが落とし穴に陥ることなく
事業承継を成功させるために、
10のチェックポイントを取り上げたいと思います。

どうしてもはずせない根本の部分ゆえ、これらを無視してやみくもに努力しても砂上の楼閣のごとく、うまくいかないのです。逆にこれらのポイントをおさえておけば、がぜん成功しやすくなります。
このチェックポイントの真意を、みなさん自身が理解し今日からの行動につなげてもらえれば幸いです。


※ここでは、経営者の息子という立場で親父の跡を継ぐ後継者を想定して話をすすめています。経営者が御袋である場合や、後継者が息子以外の場合は、内容を多少変換しながら読んでいただきたいと思います。



事業承継を成功させる10のチェックポイント】

1.経営者としての親父の偉大さを理解しているだろうか?
2.会社の本当の価値を実感できているだろうか?
3.事業承継はまだまだ先のことと思っていないだろうか?
4.親父が全部段取りしてくれると思っていないだろうか?
5.親父と腹を割って話ができるだろうか?
6.会社の財務が把握できているだろうか?
7.持ち株と同族問題の重要性を認識しているだろうか?
8.個人資産を形成する必要性を感じているだろうか?
9.三位一体の生活習慣病にかかっていないだろうか?

10.後継する覚悟が定まっているだろうか?



【チェック1】
経営者としての親父の偉大さを理解しているだろうか?

あなたの親父(お袋)さんは、激変する環境の中で
商材もお客様も、何もないところからスタートし、企業を起こしました。
あるいは先代からうまく受け継ぎ、長年存続させてきました。

雇用を生み出し、経営者としての重い責任を果たして、
あなたを含めて家族を養ってきました。
その苦労たるや、並々ならぬものがあったと思います。

私自身、一社員として働いていたときは、社長であった親父を単純に崇拝していました。

ところが、私が後継者としていざ社長代行になり、
様々な経営問題を目にしたとき
その原因をつくった親父を徹底的に否定してしまいました。
そして周囲にも親父批判をしました。
親父を否定することに、自分自身の存在意義を見いだそうとしていました。

今は、そのスタンスは全くの誤りであったと思います。
親父を否定すればするほど、自らをおとしめていることに
当時は全く気付いていませんでした。
親父を否定するところに、後継者の存在はありません。

親父を尊敬する。それを周囲に公言する。
事業承継はそこからスタートします。

決して、妄信するのではなく、
ありのままの親父を、ありのままに尊敬するのです。
後継者としての正当性も、そこから生まれます。

 【チェック2】
会社の本当の価値を実感できているだろうか?

私自身は、親父の会社に、自分の人生は縛られていると、
常々心のどこかで思っていました。

しかし、それはとんでもない思い違いでした。
倒産して初めて、自分がどれだけ会社に守られ、育てられていたのか、
会社の存在の大きさ、ありがたさを身にしみて感じました。

後継者から見て、会社の弱みは目につきやすいですが、
強みは意識にないことが多いのです。

けれども、会社が存続している以上、必ず強みがあるはずです。
それは商品や技術、あるいはサービスや信用かもしれません。
あるいは、弱みと思っていること自体が、角度を変えれば、
実は強みである場合も多いのです。

弱みばかりをあげつらって補強しても、企業は存続できません。
強みを認識し、より強化し、市場の機会に投入するのが経営の鉄則です。

実際、強みがあるのに、それをはっきり認識していないだけだとしたら、
非常にもったいない話です。
もし、強みが分からなければ、創業の経緯と会社の歴史を親父に聞きましょう。
創業の精神に立ち戻ることに、大きなヒントがあるかもしれません。

どんなに問題だらけの会社であっても、日々、社会に有用な製品やサービスを
生み出し、社員とその家族が生活しているという価値に焦点をあててください。

【チェック3】
事業承継はまだまだ先のことと思っていないだろうか?

親父からあなたに代表権が移る予定は、10年以上先かもしれません。
しかし急に親父が倒れ、決断を迫られるケースは意外に多いのです。

もし準備を怠っていれば、重要資料がどこにあるか分からず、
右往左往して、大きな判断ミスを起こしてしまう可能性は極めて高くなります。

親父がいつまでも元気で活躍してくれれば何よりですが、
いつでも自分が経営者として務められるように、
普段から準備をしておくことは、後継者の重要な役割です。

今日、究極の選択を迫られるかもしれません。
その危機感を持ち、事業承継の準備を始めましょう。
今からでも決して、早すぎることはありません。
事業承継は一時の手続きではなく、中長期の大きなプロジェクトなのです。


【チェック4】
親父が全部段取りしてくれると思っていないだろうか?

事業承継のキーパーソンは、一見、譲る側である親父に思えます。
最終権限を握っているのは、親父だからです。

しかし、本質的に事業承継というものを考えてみますと、
事業承継のキーパーソンは親父ではありません。
事業承継の真のキーパーソンは、受け取る側の後継者であるあなたなのです。

なぜなら、事業承継は、単に株式や経営権が後継者にうつっただけでは、
成功も不成功も確定せず、あくまでも、後継者が跡を継いで、
企業を存続、発展させたときに、はじめて
事業承継が成功したといえるからです。

その責任を担いうるのは、当然、譲る側の親父ではなく、
受け取る側の後継者なのです。

したがって、親父にすべての段取りを任せるというスタンスは
後継者としてふさわしいとはいえません。
親父に甘えることなく、自ら事業承継の勉強をし、戦略を練りましょう。

親父自身は経営のプロであっても、事業を譲った経験がなく、
意外と親父自身も、事業承継の落とし穴に陥っているかもしれません。

もし、あなたが自他共に認める後継者なら、
親父の意向を汲み取りながら、自ら事業承継の段取りをする姿勢をもちましょう。
何より、その姿勢が成功への原動力となります。

【チェック5】
親父と腹を割って話ができるだろうか?

後継者にとって、事業承継のキーマンは、何といっても親父です。
あなたは、親父と腹を割って話ができているでしょうか。

親父は頑固で、全然自分の話を聞いてくれないという後継者がいます。
しかし、親父は頑固で当たり前と思いましょう。
余談ですが、中小企業の創業社長は頑固な方が多いです。
だからこそ、裸一貫から創業し、これまで維持してこれたといえます。
素直な優しい性格だけで、なかなかできることではありません。
いわば、強い信念を持ち続けているのです。

もし、親父があなたの話を聞いてくれないなら、それは親父が悪いのではなく、
あなたに親父を説得する力がないと考えましょう。
あなたがしっかりしてくれば、親父も聞く耳をもつようになるでしょう。
そうなってくればしめたもので、仕事もがぜん面白くなってきます。

確かに、どうみても親父が理不尽である場合もあるかもしれません。
しかし、たとえそうであっても、親父を批判することに解決はありません。
批判すればするほど、親子の溝が深まるだけです。
いかに親父に伝えるかをじっくり考えましょう。

時機を見ることも必要です。
親父には中途半端な意見はしない方がよいでしょう。
本当に会社の存亡に関わる事項を、親父に進言する必要があるなら、
その時こそ、対親父戦略を練るべきです。

その一歩として、上司と部下としての業務上の接触以外に、
普段からコミュニケーションの場を持つとよいでしょう。
お勧めは、親父が、役所や金融機関や取引先などに出向くとき
同行させてもらうことです。
生きた勉強にもなるし、道中でいろいろと会話もできます。
「飯でも食って帰ろうか」ということにもなり、
コミュニケーションの良い機会となります。

事業承継について、親子で会話を切り出すタイミングは難しいです。
無理に話をするより、日ごろから勉強し、後継者としての意識と能力を
高めておくことが、親父と自然に腹を割った話ができる土壌を育むのです。

【チェック6】
会社の財務が把握できているだろうか?

あなたは財務諸表が読めるでしょうか。

財務諸表の読めない経営者は、
いわば、計器の読めないジャンボジェット機のパイロットと同じです。
目に見える景色と、感覚だけで飛んでおり、いつ墜落するか分かりません。

私自身は、後継者時代、簿記や会計の知識はありましたが、
経営者としての生きた知識とはなっていませんでした。
阪神大震災で父親の経営するホテルが半壊に近いダメージを受け、
休業に追い込まれたとき、財務面を考慮せず、
とりあえずホテルを再開させることを至上命題としてしまいました。

しかし、再開後、ようやく財務分析に取り組み始めて、愕然としました。
会社の財務状況をよく把握せず、
心意気だけでやみくもに頑張った私自身が、
計器を無視して飛び立ってしまった
無謀なパイロットであったわけです。

財務諸表は、日ごろ使わない専門用語が並んでいて分かりにくいかもしれません。
だからといって、財務諸表を避けていると痛い目にあいます。
財務諸表は、税務署や銀行のためだけのものではありません。
会社自身のためにつくるものであり、“みんなの幸福と不幸の源泉”なのです。

もちろん、財務諸表だけでは、現状を正確に反映していない部分があります。
例えば、取得原価で計上された資産は、実際の価値を表していません。
リースや債務保証などの隠れた負債も、財務諸表に反映されていません。
このような財務諸表の限界を理解するところまで
後継者は、財務諸表に精通しておかなければならないのです。

後継者は、一刻も早く、会社の財務を把握しましょう。
私のように、悔恨からその重要性に気付く必要はないのです。
会社の財務諸表を、自分の身に感じることが
できるようになればしめたものです。


【チェック7】
持ち株と同族問題の重要性を認識しているだろうか?

会社の株主構成を、あなたは意識しているでしょうか。

会社はだれのものかという議論はあるが、
明らかに商法は、会社が株主のものであることを前提としています。

株主こそ会社の最終決定権者であり、一定以上の株式を
保有することにより、会社の実質的支配権を握ることができます。

後継者は、まず、現状の株主構成を把握しましょう。
そして、将来、どのような株主構成が望ましいのか、今から考えておきましょう。
もし、ヘタな株主構成になってしまえば、あなたは、将来、
安定した経営ができなくなり、とんでもないトラブルを抱える破目になりかねません。

いざ、承継しようと思ったら、株価が高くて相続税が支払えない。
急に同族から株式の買取請求をされた。
名義株で裁判になった。
など、株に関するトラブルは枚挙にいとまがないのです。

株の問題は、普段は一切表に出ません。
いったん表に出たときは、最悪の事態に陥っており、
手を打とうにも打てないことがあります。

このような潜在的な問題が、自然に解決されることはなく
むしろ、時間が経てば経つほど、より解決困難になるケースがほとんどです。
場合によっては、親父と相談して早急に手を打たねばなりません。

“骨肉の争い”という言葉があります。
同族の問題については、いったんトラブルになれば泥沼状態になりかねません。
「仲がよいから大丈夫」ではなく、仲がよいからこそ、
事前に将来の争いの芽を摘み取らなければならないのです。

例えば、工場の敷地が親族との共有名義で、後に争いになったケースや、
兄弟間の確執により、事業が無茶苦茶になったケースなど、
ドラマとして見る分にはおもしろいですが、現実には味わいたくないものです。

 
【チェック8】個人資産を形成する必要性を感じているだろうか?

「あなたは、売上の2ヶ月分の現預金を個人として持っていますか?」

年商12億円の会社であれば、2億円の現預金。
年商3億円の会社であれば、5,000万円の現預金です。
あなたはどうでしょうか。

後継者であるあなたが、個人資産を形成することは必須です。
まず会社の株式を取得しなければなりませんし、
会社の信用のためにも個人資産は必要です。

そして、会社の危機に最後に頼りになるのは
オーナー経営者となるあなた自身なのです。
突発的な出来事などで、売り上げが一時的にゼロになったときでも、
あなた自身が「オーナー銀行」としての役割を果たせるだけの財力を持つべきなのです。

私は、後継者の皆さんに、自分個人の財務諸表をつくることをお勧めしています。
現在、どれだけの資産と負債があるのか。純資産はプラスかマイナスか。
よく現況を把握して、これからは徹底的に財務的に強い個人を目指しましょう。

また、よく分からずに連帯保証している後継者がいますが、
中途半端な連帯保証はするべきではありません。
基本的には、代表者になるまでは連帯保証を断る。
それぐらいガードの固い後継者こそ、会社を本当に守ることができるのです。


【チェック9】三位一体の生活習慣病にかかっていないだろうか?

経営者の心身の健康と、家庭、そして会社の業績の三つは、
一見、それぞれ別個のもので、まったく関連がないように思えます。

しかし、中小企業においては、意外にも、密接に連動しています。

へたをすると、それらが知らぬ間に、相乗的に悪化の方向に向かうのです。

経営者が、糖尿病や高血圧、あるいは脳卒中などの
一般的な「心身の生活習慣病」になる。

また、経営者が配偶者とうまくいかず、家庭が安らぐ場所ではなくなり、
家庭が家庭の機能を果たさなくなる。
いわば「家庭の生活習慣病」になる。

会社も、体質が悪くなり必要な機能が滞る。
いわば「会社の生活習慣病」の状態になる。

そして、それらが複合的に、すべてを蝕んでいく。
私は、この、「身体の生活習慣病」・「家庭の生活習慣病」・「会社の生活習慣病」
を中小企業の「三位一体の生活習慣病」と名づけ、
その認識の重要性を訴えています。

会社の業績だけではなく、自らの健康、家庭の健康を含めた
すべてが連関して良い方向に向かっているか、後継者は絶えず意識しましょう。


【チェック10】後継する覚悟が定まっているだろうか?

後継者であるあなたは、本当に自分が後継したいという
意思を持っているでしょうか?
ほかに後継者候補がいないので、
仕方なしに引き受けているのではないでしょうか?

いやいや引き受けてうまくいくほど、事業は甘いものではありません。
社員や取引先にも迷惑です。
何より、後継者であるあなた自身が不幸です。
親子の承継以外にも承継手段はあります。
もし、本当にやりたい仕事が他にあり、その道に進みたければ進めばよいのです。

継ぐなら継ぐと覚悟を決めましょう。
継がないなら、きっぱりと別の道に進みましょう。
中途半端が一番良くありません。

とはいえ、自分が経営者として適格かどうか、不安な場合もあるかもしれません。
それは客観的には判断が難しいかもしれません。
その場合は、まず、やりたいのかやりたくないのか、
自分の内心によく聴いてみましょう。

もし今、あなたが迷っているなら、とことん悩めばよいのです。
会社の現状をしっかり認識し、その上で、自分自身の方向性を
徹底的に考えることです。
例えば2年の間に結論を出すという、期限を切ってもよいのです。
その間に徹底的に頭を整理して、腹を決めることです。

もし、本当にやりたいのであれば、経営にはオリンピックで
金メダルをとるほどの天才的な能力は必要ないのだから、
意欲が能力を引き出すと信じましょう。

経営者という仕事は、大変だけど、やりがいがあり、本当におもしろいものです。
事業承継は誰にでもそのチャンスがあるわけではありません。
親父の跡を継ぐということを、大きなチャンスとして捉えて、
早いうちに、後継者としての覚悟を決めましょう。




 

 

後継者の意識変革の 事例パターン


経営者・後継者の方々から相談を頂く場合、
相手の話をじっくりと傾聴し、思いをしっかりと
受けとめることを、私はいつも心がけています。

今回は、後継者の話をじっくりとお聞きすることにより、
前向きな意識に変革する事例パターンをご紹介したいと思います。
(フィクションにしてあります。)



社歴20年のK社は、従業員15名の小売業。
63歳の創業社長からの相談です。

「32歳になる息子を後継者に考えているのですが、
親子関係がうまくいかずに困っています。
息子は入社して12年、現在は専務取締役です。
以前は特に問題は無かったのですが、
2年程前からは、関係が全くうまくいっていません。
周囲にも私の批判ばかりしているようです。」


私は社長の話を2時間近くお伺いして、会社の状況や、
社長がお悩みのことは、よく理解できました。
しかし、何かひっかかる感じが残ったので私は尋ねました。

「社長、他に何か気になっていらっしゃることはないでしょうか?
ご子息の専務の態度も、何か変ですよね・・・・」


社長は、しばし沈黙の後、話を続けられます。

「大島先生、ちょっと言いにくいことなんですが・・・・
実は、私に女性関係がありまして・・・・・ええ・・・・
その問題がばれてから、息子の態度が一変したんです。」

「ああ、そうでしたか・・・・」


社長の話によると、自分が悪い部分も大いにあり、
なんとかしたいとは思っているが、
息子にも、会社を無断で欠勤したりという問題もある。

現在、経営状況は厳しくなってきている。
自分は歳も歳なので、頭が良く仕事もできる息子に
できれば2年以内に代表権を譲りたい。

しかし、息子に会社を継ぐ気があるのか無いのかが
よくわからない。と。



数日後、社長のご子息である専務とお会いしました。


専務の態度は、
「社長が会えと言うから、いやいや仕方なくお会いする」 
という感じが、ありありとうかがえます。  


こういう状況では、
相手と信頼関係を築けるかどうかが勝負所です。

私は自分自身が後継者として苦労した体験があることと
現在は後継者の視点から、後継者専門の支援活動を
していることをお伝えしました。

その上で、専務のお話をじっくりと伺いました。


専務は、日頃感じていることや不平など、
ぽつりぽつりと本音を話しはじめました。


そして途中からは堰を切ったように、
社長の浮気や経営姿勢への不満を激しく語ったのです。


私は、話の腰を折ることなく、一切否定せず、
徹底的に専務の話を聴き、共感を示します。

「ええ・・・・なるほど・・・・・・
それは、本当に腹が立ちますよね。
そうでしたか・・・・・・・わかります・・・・」 



2時間、話し続けた専務は
毒が抜けたように、すっきりした表情に変わり、
話す内容も少しずつ変化してきました。

「でも、社長の悪口ばかり言っても仕方がないですよね。
結局、後継者の私がしっかりやっていくかどうかですよね。」



その後4ヶ月にわたり、私は専務の相談にのりました。
そのたびに専務の意識と、行動が変わっていきました。

「社長(親父)の批判をしたくなるのは、将来に対する
不安から逃げようとする、自分の甘えなんですよね。」と、
専務は冷静に現状を受けとめられるようになりました。

こうして、次期経営者として会社を担う立場であるという
認識が深まっていったのです。

それにつれ、社長との関係も修復していきました。



以上、フィクションにして事例パターンをご紹介しました。

このように、後継者である息子は、
社長である親父に対しての不満や
現状に対しての不満が溜まっていることがよくあります。

そういった場合、誰かが、後継者の話をじっくりと聞き、
その思いを受けとめることが重要です。

そうすれば、溜まっていた不満が少しずつ解消し、
本来自分の果たすべき役割や、やるべきことに
後継者の意識が向いていくのです。

 

 

Q&Aシリーズ1         後継者としての心構え    

Q.後継者としての心構えを教えてください。

私は、会社の後継者です。
数年後に代表者になる予定ですが、事業承継をひかえて、
後継者として、どのような心構えが必要でしょうか。


A.後継者としての自覚、事業承継の本質、経営者の視点が重要です。

後継者にとって重要な心構えを3つ挙げておきます。すなわち、
①後継者としての自覚をもつ、②事業承継の本質をおさえる、
③経営者の視点から考える、の3つです。


① 後継者としての自覚をもつ

将来、自分が経営者となり企業の全責任を担う立場になることを、
深く認識する必要があります。
あなたは、家族、社員、取引先、金融機関、お客様など関係者
全員の幸せに責任を持つ立場になるのです。


② 事業承継の本質をおさえる

事業承継とは、後継者の視点からその本質を考えると、
「後継者が価値あるものを受け継ぎ、価値を生み続けること」であるといえます。

事業を承継するだけでは、事業承継は意味がありません。
つまり、事業を受け継いだあと、顧客に価値ある製品やサービスを
提供し続け、利益を上げ続けることができなければ、
事業を受け継いでも、早晩、会社が立ち行かなくなり、
会社を清算することになるだけです。

事業を受け継いだあと経営者となるあなたは、将来にわたって
価値を生み続ける必要があり、その決意と覚悟が不可欠なのです。


③ 経営者の視点から考える

環境はどんどん変化していくわけですから、これまでと同じやり方を踏襲
するだけでは、将来にわたって価値を生み続けることは難しいといえます。
どうすれば将来にわたって、価値を生み続けることができるかを
経営者の視点から考え始めてください。

現在の会社と事業をしっかりと把握し、その価値を再認識してください。
そして、企業の強みを生かす経営戦略はいかにあるべきかを
考えていくことが重要です。

後継者は、代表者となってから経営者の視点を持てばよいのではありません。
代表者になる前から経営者の視点を持ち、経営者の視点から考える訓練を
積んでいくことが肝要です。

 

 

Q&Aシリーズ2    後継者育成のポイント

Q.後継者育成のポイントを教えてください。

わが社の後継者は社長の長男なのですが、
経営者になる準備が全くできていないように思えます。
事業承継を踏まえ、後継者をどのように育成すればよいでしょうか。
 
 
A.後継者の自覚を高め、後継者の心技体を鍛えることが重要です。

後継者育成において最も重要なことは、後継者自身の自覚です。
将来、自分が経営者となり企業の全責任を担うという自覚がない状態では、
後継者としての育成は進みません。

したがって、まず、後継者に対して、「事業承継のキーパーソンは後継者であり、
企業の将来はあなたにかかっている」
というメッセージを伝えることが必要です。

「あなた次第で、企業は良くもなるし、悪くもなる。家族、社員、取引先、
金融機関、お客様など関係者全員の幸せも、あなた次第」と。

後継者自身が、健全な危機感とプレッシャーを感じ、現状の自分自身では、
経営者として不十分であると自覚することが不可欠といえます。

その上で、後継者を鍛えていくわけですが、後継者の鍛えどころを
はずしてはなりません。
後継者の鍛えどころとは、心技体、すなわち
心(後継者マインド)、技(ビジネス知識)、体(コンピテンシー)です。
この心技体をバランス良く鍛えていく必要があるのです。


◆ 心
(後継者マインド)


後継者としての意識を高めていきます。
受け身ではなく、主体的・能動的に企業を受け継ぎ、
自らが新たな価値を生み出していこうとする意識です。


◆ 技
(ビジネス知識)


ビジネス知識を習得していきます。


・お金に関する知識(財務・会計等)
・人、組織に関する知識(リーダーシップ・労務・人事等)
・事業・マーケティングに関する知識(業界・内外環境の分析・経営戦略等
・マネジメント全般に関する知識(PDCAサイクル・プランニング等)


◆ 体
(コンピテンシー)

結果を生み出す行動特性(コンピテンシー)を高めていきます。

・情報把握力 ・問題分析力 ・課題設定力 ・計画策定力
・プロセス管理力 ・決断力 ・ヒアリングスキル ・対人感受性 
・指導育成力 ・組織活性化力 ・方向づけする力
・自己開示能力 ・自律一貫性 ・柔軟性 ・バイタリティ
・ストレス耐性 ・革新性 ・倫理観  等


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Q&Aシリーズ3      後継者がいない場合  

Q.後継者がいない場合、どうすればよいでしょうか?

わが社には跡を継ぐ後継者がいません。経営者はすでに高齢で、
将来が不安です。事業承継について、どうすればよいでしょうか。


A.最もふさわしい事業承継の形態を検討し、対策を立ててください。


後継者不在の状況というのは企業として大きな問題といえます。
まして、現経営者が高齢であるとすれば、いつ何が起こっても
おかしくありません。経営者不在の状況が生まれると、
企業として立ち行かなくなってしまいます。

さて、事業承継で最も重要なことは、経営者の自覚といえます。
現在、後継者が不在であり、それが企業にとって問題があるということを、
経営者自身がしっかり問題として認識していなければ、
対策の立てようもありません。

まず、経営者が、企業を次世代につなぐことは、
経営者が必ずやるべき仕事であるという自覚を持つ必要があります。
そして、事業承継の対策を早急に立てる必要があります。

現在、後継者が不在ということですが、誰に承継できるのか、
その可能性を徹底的に検討してください。
以下に事業承継の形態を記します。


(1)息子・娘への承継

経営者に息子・娘がいれば、跡を継ぐチャンスがあることを伝え、
その可能性を検討します。

(2)親族への承継
経営者の兄弟、甥など親族への承継の可能性を検討します。

(3)社員への承継
社員の中で、経営者になる意思と能力のある人への承継の可能性を
検討します。

(4)他社への承継
他社へのM&Aの可能性を検討します。

(5)社会への承継
会社が既に社会における役割を終えたと判断した場合、
会社を清算することを検討します。会社を清算することも、
価値あるものを社会へ承継することであると考えると、
事業承継のひとつのかたちといえます。

できれば、事業承継の専門家に相談しながら、上記の可能性を
十分検討した上で、どれが最も企業にとってふさわしいかを判断し、
対策を立てることが重要です。

 

 

Q&Aシリーズ4    社員との関わり方

Q.後継者として社員とどのように関わればよいですか?

私は、まだ20代後半ですが、社長の長男で会社の後継者と目されています。
事業承継を控え、リーダーシップを発揮していかなくてはならないと
思っているのですが、社員とどのように関わっていけばよいでしょうか。


A.社員の期待に応えられる自分をつくることから始めてください。

どのように社員と関わったらよいか、悩んでいる後継者は少なくありません。
しかし、関わり方ばかりをスキルとして身につけようとしても、
社員と良い関係を持つことはできません。

社員との関わり方を考える前提として、社員の期待をしっかり認識して、
その期待に応える自分をつくっていくことが重要です。


社員は、後継者であるあなたに、何を期待しているでしょうか。

おそらく、社員は、後継者であるあなたが、
近い将来しっかりとした経営者となり、企業をしっかりと経営し、
良い企業にしていくことを期待していることでしょう。

その期待に応えられる自分をつくることから始めてください。


まず、自分自身の想いを再確認してください。
あなたは、将来、経営者として企業をよりよくし、
社員に幸せになってもらいたいという想いを、強く持っているでしょうか。

次に、自分自身の経営者としての能力を再確認してください。
社長の長男であるというだけでは、次期経営者としてふさわしいとは
認められません。認められるためには、あくまでも、経営者としての
実力が備わっていることが不可欠です。


しかし、リーダーシップを発揮しようと気負いすぎても、
実力以上の力は発揮できません。
大事なことは、現在の自分の実力を客観的に把握すること。
そして足りない部分を徐々に補っていく努力を続けることです。

社員は、経営者としての能力を身につけようと努力し、
良い企業にするために、しっかりと経営をしていこうとするあなたの姿勢を見て
この人と一緒に働きたいという意欲を持つものではないでしょうか。


まずは、自分自身のあり方を律していく。
これがリーダーシップを発揮する上で、重要な要素であることを認識しましょう。

その上で、社員との関わり方のポイントとしては、
気負いすぎず、自然体で接してください。

ともに会社を良くしていくパートナーであるという意識で、
自分から社員に関わっていく姿勢も大切にしていきましょう。

 

 

 

 

後継者の知恵習得シリーズ 「企業理念」

後継者の知恵習得シリーズ、第1回として、「企業理念」について、問題提起
させていただきます。
 
「経営用語の基礎知識」では、「企業理念」を以下のように定義しています。

「企業理念(CorporatePhilosophy)
経営者の経営哲学、企業経営や組織の基本像(原点)を表したもの。
社員一人一人の業務にまで浸透させることが大事。
 
「企業理念」は、英語で「コーポレート・フィロソフィ」と表されますが、企業経営者の経営哲学や価値観等をまとめたものです。「経営理念」という言葉もあり、
厳密に両者を区別する人もいますが、通常は、ほぼ同じ意味で使われます。

「企業理念」の一例として、オムロングループのものを紹介しておきます。
オムロングループでは、2006年5月、「基本理念」・「経営理念」・「経営指針」・「行動指針」の四項目からなる新たな「企業理念」を制定しました。




                                             (オムロングループ ホームページより掲載)


「企業理念」が重要であることは、数々の事例が証明しています。
しっかりした企業理念が内外に浸透することで、成長発展した企業の例は、
数多く挙げることができます。よって後継者が「企業理念」をまとめたり、
社員に浸透させるための取り組みは非常に重要といえます。

その反面、単に「企業理念」を制定しただけでは、何の効果も無いばかりか、
後継者が、軽々しく「企業理念」を語ることは、害をもたらすことさえありえます。



1.「企業理念」

「企業理念」を、その価値から3つに分類してみます。


(1)価値のある「企業理念」

企業の目的・あるべき姿・経営のやり方などが
「企業理念」として凝縮された形で表現され、経営者が本当にそれを信じている。
対外的には顧客、株主、取引先、地域社会に、
対内的には社員に浸透し、企業の発展の原動力になっている場合です。


(2)価値のない「企業理念」

企業を訪問すると、「社会貢献」とか「創造の精神」などの「企業理念」が
額に入れられて掲示されています。その額は十年以上掲げられていますが、
社員の誰も気に留めておらず、埃をかぶっています。

経営者自身も、その額について話しをすることもなく、意識の外にあります。
大掃除のときには邪魔になりますが捨てるわけにもいかず、
とりあえず掲げたままになっています。

こういった「企業理念」は、毒にも薬にもなりません。


(3)害のある「企業理念」

経営者が、朝礼や会議などで話したり、社員全員で唱和する「企業理念」が、
現実と矛盾していることがあります。

例えば、「お客様第一主義」と掲げながら、実際は、
お客様のことをぞんざいに扱っていたり、自社の利益のみを優先して
お客様を単なる利益をもたらすだけの存在と考えている場合です。

また、気持ちでは確かに「お客様第一主義」と思っているのですが、
それを行動に表すことが全くできていないケースです。
 
このような「企業理念」は価値があるどころか、害のあることに気づくべきです。
社員からみると、経営者がうそをついてるという感覚すら持ちます。
結局、経営者の言行不一致がクローズアップされてしまい、
従業員のモチベーションを下げる要因ともなります。


2.後継者が陥る「企業理念」の落とし穴 
 
特に後継者に見受けられる落とし穴について、述べます。


(1)身の丈に合わない発言

まだ知識も経験も少ない若い後継者が、経営理念について、
したり顔で社員に語りかけている光景を見ることがあります。
本人にとっては、経営者として当然の言動であると思っていますが、
社員は、なぜか違和感を感じます。

もちろん、社員は黙って聞いていますが、内心どのように思っているか
わかったものではありません。
「なぜ、こんな若造にえらそうに言われないといけないんだ!」
「社会貢献なんて言っているけど、本当にわかって言ってるんだろうか。
そんなことより、先にしっかり儲けて、給料上げてよ。」
という声が聞こえてきそうです。
   

(2)先走った「企業理念」づくり

自社に、しっかりした「企業理念」が無いことに気づき、わが社も
「企業理念」を制定しなければと、「企業理念」づくりに取り組む
後継者もいます。経営の勉強をしている後継者に多いケースです。
 
自社がどのような目的で存在し、どのようにあるべきかを
考えること自体は、後継者にとって不可欠なことです。

しかし、自社の現状をよく理解せず、今後の自社の市場における方向性
などを吟味しないまま、抽象的な「企業理念」を先行して発表してしまうことは、
非常に危険です。

なぜなら、後継者の未熟さとともに、事業方針や経営戦略の無さが、
かえってクローズアップされてしまい、社員が逆に不安に感じる可能性が
高いからです。


3.「企業理念」のツボ

「企業理念」は、企業の目的そのものや価値観を表す、まさに企業の根幹です。
だからこそ中途半端に扱ってはなりません。

それでは、「企業理念」に関して、後継者はどのように取り組むべきなのか、
そのツボを紹介します。


(1)自分の身の丈を知る

後継者であるあなたは、まず、自分自身を見つめなおすところから
スタートするべきです。

年齢・経験・貫禄と、周りからの印象を十分認識しましょう。
年若く経験の浅い自分自身の身の丈を知り、謙虚な姿勢で
「企業理念」に向き合うとよいでしょう。
 
その上で、背伸びをせず、本当に自分が納得して、
身に感じていることのみを発言してください。

「まだ、自分はよくわからないけど、やっぱりこういうことを
大事にしていきたいと思っています。」
というような姿勢で、人にその思いを伝えましょう。

後継者は創業者とちがって、「俺についてこい」式の
リーダーシップはとりにくいものです。

それよりも「企業理念」を旗印にして、
「自分もこの企業理念を信じて頑張っていくので、みなさんも協力してほしい」
という姿勢が望ましいと思います。


(2)「企業理念」の前に「経営戦略」

後継者であるあなたは、企業理念の策定を手がけるよりも、
まずは経営戦略をしっかり打ち立てるべきです。

自社の強みと弱み、及び外部環境を幅広く把握・分析した上で、
自社が生き残るための具体的な経営戦略(商品戦略・市場戦略
・販売戦略・財務戦略・人事戦略等)を練ることが大切です。

「企業理念」の策定をあせる必要はありません。
経営戦略を構築し、それを実行に移していくプロセスの中で、
おのずと「企業理念」が見えてくるものです。


(3)「企業理念」の前に「自己理念」

企業は、経営者の器以上には成長しません。
ゆえに、企業理念の前提として、後継者のあなた自身が
どのようになりたいかという「自己理念」の確立が不可欠です。

あるべき姿から自己を反省し、常に自己革新していく姿勢が大切です。
しっかりした「自己理念」を持ち、人間的に日々成長するあなたこそが、
真の「企業理念」を構築できるのです。

 

後継者の知恵習得シリーズ 「財務諸表」

後継者の知恵習得シリーズの第2回として、「財務諸表」について、問題提起させ
ていただきます。
 
企業の「財務」を語る上で必須である「財務諸表」の概要について、簡単に述べておきます。「経営用語の基礎知識」では、「財務諸表」を以下のように定義しています。


  「財務諸表(FINANCIAL STATEMENT)」

   ▼1年間
経営活動の成績財政状態をまとめた報告資料
   ▼企業の客観的な姿を知ることができる。
 


「財務諸表」は、ある時点での財政状態と一定期間の経営活動の成績をまとめ、
外部の利害関係者に正しく報告するための資料です。
会社法や証券取引法などに定められたルールにしたがって作成され、
企業の真の姿を映し出す鏡のようなものです。

 「財務諸表」は主に、

(1) 「貸借対照表」(BALANCE SHEET:B/S)
(2) 「損益計算書」(PROFIT & LOSS STATEMENT:P/L) 
から構成されます。

(1)「貸借対照表」は、ある時点(決算日)における企業の財政状態(ストック)を示すものです。企業がどこから資金を調達しているかを示す「負債」と「純資産」を右側に表示し、その資金をどのように運用しているかを示す「資産」を左側に表示します。左右がバランスすることから、「バランスシート」とも呼ばれます  

(2) 「損益計算書」は、一定期間(会計期間)の資金の流れ(フロー)を示すものです。企業がいくらの「費用」をかけて、いくらの「収益」を上げ、結局いくらの「利益」が残ったのかという、経営活動の成績を表示します 
 
 
 
  「財務諸表」の一例として、カルピス株式会社のものを紹介しておきます。 

 



1.「財務諸表の重要性」

後継者であるあなたは、「財務諸表」が読めますか?

「財務諸表」の重要性を理解していますか?

企業は、最終的には数字で評価されます。
その数字を作り出すのが経営者の仕事です。
その経営者が、数字がわからないでは務まりません。
経営者が、「財務諸表」に通じていることは、得意不得意の問題ではなく、
絶対条件なのです。

たしかに、あなたの親父さん、御袋さんは、「財務」の知識に疎く、
これまで皮膚感覚で経営してきたかもしれません。
しかし、後継者であるあなたは、こういう芸当をあてにしないほうがよいでしょう。
しっかり「財務諸表」を勉強して、「財務」を繰れる経営者をめざしましょう。

枝葉末節な知識に振り回されることなく、「財務」の本質を掴んだうえで、
「財務」の感覚を磨いていけばいいのです。


2.後継者が陥る「財務諸表」の落とし穴

特に後継者に見受けられる落とし穴について、述べます。

(1)「財務諸表」を見たことがない

あなたは、自社の「財務諸表」を見たことがありますか。

さすがに、すでに代表者になっている後継者のほとんどは、
自社の「財務諸表」を見ているでしょう。

まだ代表者になっていない後継者の中には、
自社の「財務諸表」を見たことがない人が、意外と多いのも事実です。
後継者の道をスタートさせていながら、自社の「財務諸表」を見たことがない
というのは、大きな落とし穴といえます。
単に「財務諸表」を見る機会がなかったという場合もあれば、
親父さんから見せてもらえないという場合もあるでしょう。

しかし、自社の財務状況や業績は、「財務諸表」に集約されています。
その「財務諸表」を見たことがないということは、後継者としての
役割やスタンスから、かなり逸脱していると考えるべきです。 


(2)「財務諸表」が読めない

あなたは、「財務諸表」が読めますか。

たしかに、「財務諸表」は、日ごろ使わない専門用語が並んでいます。
慣れないと分かりにくいといえます。
よって、「財務諸表」に苦手意識を持ち、勉強を避け、
理解しようとしない後継者も多く存在します。 

しかし、「財務諸表」の読めない経営者は、計器の読めない
ジャンボジェット機のパイロットと同じです。
目に見える景色と、感覚だけで飛んでいるようなもので、
いつ墜落するか分かりません。 

将来、経営者となる後継者にとって、「財務諸表」が読めないことは、
致命的な欠陥と考えるべきです。


(3)「財務諸表」を身に感じない 

あなたは、自社の「財務諸表」を身に感じますか。

自社の「財務諸表」を見て、それが知識的に読めたとしても、
その「財務諸表」を、自分の身に感じることのできる後継者が
少ないのも事実です。

「財務諸表」は、単なる数字の寄せ集めではありません。
その数字には、必ず、その元となる実際の資産・負債や、
企業活動の存在があります。

自社の「財務諸表」を読むときに、数字と実態が自分の中でリンクできなければ、
正しく「財務諸表」と関わりをもっているとはいえません。

「財務諸表」は、関係者みんなの幸福と不幸の源泉です。

後継者がそういった意味で「財務諸表」を身に感じることができなければ、
いくら「財務」の知識があろうと、本当の力とはなりません。


3.「財務諸表」のツボ

それでは、「財務諸表」に関して、後継者はどのように取り組むべきなのか、
そのツボを紹介します。

(1)自社の「財務諸表」を手に入れる。 

後継者であるあなたは、まず、自社の「財務諸表」を手に入れましょう。

通常、「財務諸表」は「決算書」と呼ばれます。
税務署に提出する、確定申告書の中に綴じこんであります。

社長に、「財務諸表」を見せてもらうようお願いしてください。
普通は、後継者であるあなたが勉強したいといえば、
喜んで見せてくれるでしょう。

もし見せてくれない場合は、何か問題があると言えます。
見せられないぐらい、財務状況が悪いということも考えられますし、
社長あるいは、あなた自身に何か問題があるのかもしれません。
いずれにしても、その問題を明らかにすることが必要です。


(2)自社の「財務諸表」を見る。 

自社の「財務諸表」を手に入れたら、ざっと目を通しましょう。
まず、貸借対照表で、資産と負債を確認しましょう。

どんな資産と負債がありますか。
純資産も確認しましょう。

資産合計はいくらですか。
負債・純資産合計と同じ数字で、左右バランスしていることを確認してください。
次に、損益計算書で、売上と費用を確認しましょう。
利益が出ていますか。
それとも損失が出ていますか。

資産・負債・純資産・収益・費用・利益の大枠をつかんでから、
細かい項目を確認していきましょう。


(3)「財務諸表」の知識を身につける。 

自社の「財務諸表」を見て、その内容が理解できましたか。

やはり「財務諸表」を読むために、最低限の知識は必要です。
後継者であるあなたは、具体的な「財務諸表」の知識を身につける必要があります。
勉強したことが無駄になることはまずありません。
安心して勉強してください。

勉強するための時間と労力を掛けることが求められます。
まずは、書店で読みやすそうな簿記や会計の本を買って、読んでみましょう。
簿記や会計のセミナーに参加してみるのも良いでしょう。 

わからないことがあれば、親父さんや経理担当者、または、
会計士・税理士・中小企業診断士などの専門家に尋ねてみましょう。


(4)自社の「財務諸表」を身に感じる。 

自社の「財務諸表」の数字を、リアルに感じられるまで、
その項目の数字と実態をつき合わせる努力が必要です。 

自社は本当に儲かっているのか、という収益性と、
潰れやすいのか潰れにくいのか、という安全性を、
「財務諸表」から感じとれるようになることが重要です。

自分自身・家族・社員・関係者が豊かで幸せになることを望み、
その基盤が「財務諸表」にあることを確認してください。

「財務諸表」は、関係者みんなの幸福と不幸の源泉です。

普段から「財務諸表」に関わりを持ち、「財務諸表」を自分の身に感じることが
できるようになれば、後継者としてひとつの段階をクリアーしたと言えます。



 

 

後継者の知恵習得シリーズ 「リーダーシップ」

後継者の知恵習得シリーズの第3回として、後継者の「リーダーシップ」について、問題提起させていただきます。

はじめに、企業の「人事」を語る上で、必須である経営者の「リーダーシップ」
について、簡単に解説しておきます。
「経営用語の基礎知識」では、「リーダーシップ」を以下のように定義しています。



「リーダーシップ (Leadership)」

 ▼「経営用語の基礎知識」での定義

企業変革の際に
変革を指揮するトップや、変革を支えるミドルなくてはならない能力 
  

環境は絶えず変化していくわけですから、企業が生き残っていくためには、
経営者は環境変化に適応し、企業自体を変革していかなければなりません。
すなわち、このリーダーシップの定義は企業変革を
前提としたものとなっています。
ここで、もう少し噛み砕いたリーダーシップの定義を考えてみたいと思います。 


「リーダーシップ」とは、一般には、リーダーとしての素養・能力・統率力のこと
であり、リーダーシップの理論では、以下のように定義されます。

「リーダーシップ(Leadership)」

 ▼「リーダーシップ理論」での定義

   人を通して課題を達成していくこと 


この定義を分解すると、「人を通して」という部分と「課題を達成していくこと」
という部分の2つに分けられます。

つまり、「課題を達成していくこと」がリーダーシップの目的であり、
「人を通して」とは、その手段と捉えてもよいでしょう。 

この2つの切り口は、時代がいかに変わろうとも変わることのない
「リーダーシップの普遍の2軸」であると考えられています。(下図)

 
 
この定義から考えると、リーダーは、この2軸の両方を兼ね備えていなければならないということになります。
 
 
(1) リーダーは、業績に対する関心を強く持つとともに、人に対する関心
      を強く持たなければならない。

(2) リーダーは、Pパフォーマンス行動(業績達成行動)をとるとともに、
   Mメンテナンス行動(組織維持行動)をとらなければならない。

(3) リーダーは、構造作りをするとともに、配慮(思いやり)を示さねば
   ならない。 
(4) リーダーには、IQ(インテリジェンス)が必要であるとともに、
   EQ(エモーショナル)が必要である。
 

リーダーは、上記のようなことが求められるわけです。


  
 1.「リーダーシップ」は後天的な能力

あなたは、社員から次世代のリーダーとして信頼されていますか?
もしかして、頼りがいのない後継者と思われていないでしょうか。
組織のリーダーは、人を通して課題を達成していくことが求められます。
自分ひとりだけでは、何事も為し得ません。

しかし、経営者としての知識も経験も豊富でないかもしれないあなたが、
いかに社員を統率していけばよいのでしょうか。

それには、リーダーシップの鉄則を学び、自分自身を知った上で、
リーダーシップを少しずつ体得していけばいいのです。

幸い、リーダーシップは先天的な才能ではありません。
リーダーシップは、後天的に身につけることができます。
リーダーシップに自信のないあなたも安心してください。
これから、真のリーダーシップを身につけていくことが可能なのです。


2.後継者が陥る「リーダーシップ」の落とし穴

特に後継者に見受けられる、リーダーシップの落とし穴について
述べていきましょう。

(1)リーダーシップの2軸のどちらかに偏ってしまう 

あなたはリーダーシップの2軸を、両方とも押さえているでしょうか?
多くの後継者は、リーダーシップの2軸の意識がありません。
無意識のうちに、2軸のどちらかに偏ってしまいます。

「課題・仕事の軸」が強く、「人・組織の軸」が弱い後継者 

いわゆる「やり手」といわれる後継者に多いタイプです。

業績を上げるために、自分自身一生懸命仕事に取り組みます。
社員にどんどん指示・命令します。
反面、人間的配慮や思いやりに欠けるところがあり、社員の話を聞きません。
社員から慕われず、社員の自主性を引き出すことができません。

職場はぎすぎすした雰囲気となり、社員が定着しません。
業績が良いときはいいのですが、一旦業績が下がり始めると、
いくら挽回しようとしても、社員の協力が得られず孤立してしまいます。

「人・組織の軸」が強く、「課題・仕事の軸」が弱い後継者 
 
いわゆる「いい人」といわれる後継者に多いタイプです。

社員の状況や気持ちに配慮し、社員と良い関係を築こうとします。
反面、業績への関心が薄く、業績を上げるための力強い行動は見られません。
社員と少しでも葛藤があると、すぐ妥協してしまい、方針が徹底しません。

このような企業は、同じ目的に向って力を結集する集団というよりも、
仲良しクラブのようになってしまいます。
このような後継者は、当然、業績を上げることができません。
結果として、社員からの信頼も得られず、
社員と良い関係を築くこともできなくなってしまいます。
 
 
(2)親父や名経営者の物まねに陥ってしまう
  
後継者の中には、親父さんそっくりの言動をとる方も見受けられます。

もちろん、親父さんのリーダーシップを、ずっと傍で見ているわけですから、
自然と似てくるのも当然かもしれません。
しかし、親父さんと同じ口調や態度で社員に接している後継者を見ると、
違和感を感じる場合もあります。

本人は全く違和感を感じていないかもしれませんが、
年齢も経験も異なる後継者の言動としては、無理のある場合があります。

社員は黙っていますが、心の中では
「なぜ、この若造に、このように偉そうに言われないといけないんだ」
「形だけ真似たって、威厳なんか感じないよ」
などと感じていることがあります。

また、名経営者の話を聞いたり、書籍を読んだりして、その言動を真似る後継者もいます。

もちろん、そのような努力は評価すべきですが、
自分自身の身の丈やキャラクターにあっていないと、形だけの物まねに陥ってしまいます。
 
 
(3)親父を反面教師にしすぎる
 
逆に、親父さんを反面教師にしすぎる後継者もいます。

つまり、親父さんのやり方に反発し、
「自分は親父のやり方だけは絶対とらない」
と考えて、極端な言動に走るケースです。

例えば、親父さんのワンマンぶりが気に入らない後継者が、逆に、
社員の考えや気持ちに配慮しすぎるスタイルになってしまう場合などです。

親父さんを反面教師にしすぎる結果、バランスの偏った
リーダーシップ行動に陥ってしまいます。
 
 
(4)リーダーとして気負いすぎる
 
リーダーとはこうあるべきだ、という思いが強すぎて、
気負いすぎている後継者もいます。

もちろん、リーダーである自分を意識するのはよいことですが、
気負いすぎても空回りしてしまいます。

社員は、万能のリーダー像を期待しているわけではありません。
もちろん将来、リーダーとして成長していくことを内心期待しているでしょうが、
今すぐにすべてを望んでいるわけではありません。

それをわからず、気負いすぎたり、強がったりしても、
真のリーダーシップは発揮できません。 


3.「リーダーシップ」のツボ

それでは、「リーダーシップ」に関して、後継者はどのように取り組むべきなのか、
そのツボを紹介します。

(1)業績にシビアになる
 
リーダーシップの第一歩は、業績にシビアになることです。

いくらきれいごとを言っても、業績が上がらなければ企業は存続できません。
極めて当たり前のことです。
この冷徹な事実に、まず目を向けることが重要です。

業績にシビアになるとは、短期的な業績を意識することだけではありません。
中長期的に業績の上がる企業にするために、どういう戦略をとっていくのか、
どういう仕組みを作っていくのか等を徹底的に考えて、実現していく執念を意味します。
業績が上がってこそ、社員は飯を食うことができるのです。

この後継者についていけば、飯が食えるという感覚を与えることができるか
どうかが、後継者のリーダーシップの試金石といえます。
 
 
(2)コミュニケーションの能力を磨く
 
後継者は、コミュニケーションの能力を磨いていく必要があります。

近年、個人の能力を最大限に引き出し、自立型人材育成のために
欠かせないコミュニケーション・スキルとして、コーチングが脚光を浴びています。
そのスキルを学ぶことは、非常に有益です。
まずは、コーチングのスキルのうち、「傾聴のスキル」と「承認のスキル」
を押さえておきましょう。

「傾聴のスキル」とは、話を聴くためのスキルです。

傾聴とは、単に言葉を聴くだけではありません。
相手の気持ちや感情など、全てに関心をもって聴くことです。

社員の話を途中で遮らずに徹底的に聴くことにより、
社員の考えていることや、感じていることがよくわかるようになります。
同時に、社員も信頼を寄せてくれるようになります。

「承認のスキル」とは、相手の成長や変化を認めて、相手に伝えるスキルです。

人は誰でも、正当な評価をされたいという、承認欲求を持っています。
社員の働きに感謝の意を表したり、良いところを認めていくことによって、
社員は満足感を得られ、モチベーションが上がります。

一度、コーチングのスキルを学ばれることをお勧めします。
 
 
(3)自分自身のリーダーシップスタイルを徐々に創る
 
リーダーシップには鉄則がありますが、リーダーシップスタイルは、
個々の経営者によって異なっており、ひとつの型があるわけではありません。
後継者であるあなたは、親父さんや名経営者と言われる人たちからリーダーシップを学ぶことはできますが、そのスタイルをそのまま踏襲できるわけではありません。

まず、自分自身の強みと弱みを知ることから始めてください。
 
あせる必要はありません。

リーダーシップを少しずつ体得していこうとする姿勢こそが、
求められていると考えてください。
「リーダーシップの普遍の2軸」等の鉄則を押さえながらも、あくまでも、
自分自身のリーダーシップスタイルを徐々に創っていけばよいのです。


 

 

 
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