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後継者に告ぐ 早く気付け!早く取り組め! ~事業継承の落とし穴~

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後継者の意識変革の 事例パターン


経営者・後継者の方々から相談を頂く場合、
相手の話をじっくりと傾聴し、思いをしっかりと
受けとめることを、私はいつも心がけています。

今回は、後継者の話をじっくりとお聞きすることにより、
前向きな意識に変革する事例パターンをご紹介したいと思います。
(フィクションにしてあります。)



社歴20年のK社は、従業員15名の小売業。
63歳の創業社長からの相談です。

「32歳になる息子を後継者に考えているのですが、
親子関係がうまくいかずに困っています。
息子は入社して12年、現在は専務取締役です。
以前は特に問題は無かったのですが、
2年程前からは、関係が全くうまくいっていません。
周囲にも私の批判ばかりしているようです。」


私は社長の話を2時間近くお伺いして、会社の状況や、
社長がお悩みのことは、よく理解できました。
しかし、何かひっかかる感じが残ったので私は尋ねました。

「社長、他に何か気になっていらっしゃることはないでしょうか?
ご子息の専務の態度も、何か変ですよね・・・・」


社長は、しばし沈黙の後、話を続けられます。

「大島先生、ちょっと言いにくいことなんですが・・・・
実は、私に女性関係がありまして・・・・・ええ・・・・
その問題がばれてから、息子の態度が一変したんです。」

「ああ、そうでしたか・・・・」


社長の話によると、自分が悪い部分も大いにあり、
なんとかしたいとは思っているが、
息子にも、会社を無断で欠勤したりという問題もある。

現在、経営状況は厳しくなってきている。
自分は歳も歳なので、頭が良く仕事もできる息子に
できれば2年以内に代表権を譲りたい。

しかし、息子に会社を継ぐ気があるのか無いのかが
よくわからない。と。



数日後、社長のご子息である専務とお会いしました。


専務の態度は、
「社長が会えと言うから、いやいや仕方なくお会いする」 
という感じが、ありありとうかがえます。  


こういう状況では、
相手と信頼関係を築けるかどうかが勝負所です。

私は自分自身が後継者として苦労した体験があることと
現在は後継者の視点から、後継者専門の支援活動を
していることをお伝えしました。

その上で、専務のお話をじっくりと伺いました。


専務は、日頃感じていることや不平など、
ぽつりぽつりと本音を話しはじめました。


そして途中からは堰を切ったように、
社長の浮気や経営姿勢への不満を激しく語ったのです。


私は、話の腰を折ることなく、一切否定せず、
徹底的に専務の話を聴き、共感を示します。

「ええ・・・・なるほど・・・・・・
それは、本当に腹が立ちますよね。
そうでしたか・・・・・・・わかります・・・・」 



2時間、話し続けた専務は
毒が抜けたように、すっきりした表情に変わり、
話す内容も少しずつ変化してきました。

「でも、社長の悪口ばかり言っても仕方がないですよね。
結局、後継者の私がしっかりやっていくかどうかですよね。」



その後4ヶ月にわたり、私は専務の相談にのりました。
そのたびに専務の意識と、行動が変わっていきました。

「社長(親父)の批判をしたくなるのは、将来に対する
不安から逃げようとする、自分の甘えなんですよね。」と、
専務は冷静に現状を受けとめられるようになりました。

こうして、次期経営者として会社を担う立場であるという
認識が深まっていったのです。

それにつれ、社長との関係も修復していきました。



以上、フィクションにして事例パターンをご紹介しました。

このように、後継者である息子は、
社長である親父に対しての不満や
現状に対しての不満が溜まっていることがよくあります。

そういった場合、誰かが、後継者の話をじっくりと聞き、
その思いを受けとめることが重要です。

そうすれば、溜まっていた不満が少しずつ解消し、
本来自分の果たすべき役割や、やるべきことに
後継者の意識が向いていくのです。

 

 

Q&Aシリーズ1         後継者としての心構え    

Q.後継者としての心構えを教えてください。

私は、会社の後継者です。
数年後に代表者になる予定ですが、事業承継をひかえて、
後継者として、どのような心構えが必要でしょうか。


A.後継者としての自覚、事業承継の本質、経営者の視点が重要です。

後継者にとって重要な心構えを3つ挙げておきます。すなわち、
①後継者としての自覚をもつ、②事業承継の本質をおさえる、
③経営者の視点から考える、の3つです。


① 後継者としての自覚をもつ

将来、自分が経営者となり企業の全責任を担う立場になることを、
深く認識する必要があります。
あなたは、家族、社員、取引先、金融機関、お客様など関係者
全員の幸せに責任を持つ立場になるのです。


② 事業承継の本質をおさえる

事業承継とは、後継者の視点からその本質を考えると、
「後継者が価値あるものを受け継ぎ、価値を生み続けること」であるといえます。

事業を承継するだけでは、事業承継は意味がありません。
つまり、事業を受け継いだあと、顧客に価値ある製品やサービスを
提供し続け、利益を上げ続けることができなければ、
事業を受け継いでも、早晩、会社が立ち行かなくなり、
会社を清算することになるだけです。

事業を受け継いだあと経営者となるあなたは、将来にわたって
価値を生み続ける必要があり、その決意と覚悟が不可欠なのです。


③ 経営者の視点から考える

環境はどんどん変化していくわけですから、これまでと同じやり方を踏襲
するだけでは、将来にわたって価値を生み続けることは難しいといえます。
どうすれば将来にわたって、価値を生み続けることができるかを
経営者の視点から考え始めてください。

現在の会社と事業をしっかりと把握し、その価値を再認識してください。
そして、企業の強みを生かす経営戦略はいかにあるべきかを
考えていくことが重要です。

後継者は、代表者となってから経営者の視点を持てばよいのではありません。
代表者になる前から経営者の視点を持ち、経営者の視点から考える訓練を
積んでいくことが肝要です。

 

 

Q&Aシリーズ2    後継者育成のポイント

Q.後継者育成のポイントを教えてください。

わが社の後継者は社長の長男なのですが、
経営者になる準備が全くできていないように思えます。
事業承継を踏まえ、後継者をどのように育成すればよいでしょうか。
 
 
A.後継者の自覚を高め、後継者の心技体を鍛えることが重要です。

後継者育成において最も重要なことは、後継者自身の自覚です。
将来、自分が経営者となり企業の全責任を担うという自覚がない状態では、
後継者としての育成は進みません。

したがって、まず、後継者に対して、「事業承継のキーパーソンは後継者であり、
企業の将来はあなたにかかっている」
というメッセージを伝えることが必要です。

「あなた次第で、企業は良くもなるし、悪くもなる。家族、社員、取引先、
金融機関、お客様など関係者全員の幸せも、あなた次第」と。

後継者自身が、健全な危機感とプレッシャーを感じ、現状の自分自身では、
経営者として不十分であると自覚することが不可欠といえます。

その上で、後継者を鍛えていくわけですが、後継者の鍛えどころを
はずしてはなりません。
後継者の鍛えどころとは、心技体、すなわち
心(後継者マインド)、技(ビジネス知識)、体(コンピテンシー)です。
この心技体をバランス良く鍛えていく必要があるのです。

                                                          ◆ 心(後継者マインド)

後継者としての意識を高めていきます。
受け身ではなく、主体的・能動的に企業を受け継ぎ、
自らが新たな価値を生み出していこうとする意識です。

                                                        ◆ 技(ビジネス知識)

ビジネス知識を習得していきます。


・お金に関する知識(財務・会計等)
・人、組織に関する知識(リーダーシップ・労務・人事等)
・事業・マーケティングに関する知識(業界・内外環境の分析・経営戦略等            ・マネジメント全般に関する知識(PDCAサイクル・プランニング等)

                                                        ◆ 体(コンピテンシー)

結果を生み出す行動特性(コンピテンシー)を高めていきます。

・情報把握力 ・問題分析力 ・課題設定力 ・計画策定力
・プロセス管理力 ・決断力 ・ヒアリングスキル ・対人感受性 
・指導育成力 ・組織活性化力 ・方向づけする力
・自己開示能力 ・自律一貫性 ・柔軟性 ・バイタリティ
・ストレス耐性 ・革新性 ・倫理観  等                                 

 

Q&Aシリーズ3      後継者がいない場合  

Q.後継者がいない場合、どうすればよいでしょうか?

わが社には跡を継ぐ後継者がいません。経営者はすでに高齢で、
将来が不安です。事業承継について、どうすればよいでしょうか。


A.最もふさわしい事業承継の形態を検討し、対策を立ててください。


後継者不在の状況というのは企業として大きな問題といえます。
まして、現経営者が高齢であるとすれば、いつ何が起こっても
おかしくありません。経営者不在の状況が生まれると、
企業として立ち行かなくなってしまいます。

さて、事業承継で最も重要なことは、経営者の自覚といえます。
現在、後継者が不在であり、それが企業にとって問題があるということを、
経営者自身がしっかり問題として認識していなければ、
対策の立てようもありません。

まず、経営者が、企業を次世代につなぐことは、
経営者が必ずやるべき仕事であるという自覚を持つ必要があります。
そして、事業承継の対策を早急に立てる必要があります。

現在、後継者が不在ということですが、誰に承継できるのか、
その可能性を徹底的に検討してください。
以下に事業承継の形態を記します。


(1)息子・娘への承継

経営者に息子・娘がいれば、跡を継ぐチャンスがあることを伝え、
その可能性を検討します。

(2)親族への承継
経営者の兄弟、甥など親族への承継の可能性を検討します。

(3)社員への承継
社員の中で、経営者になる意思と能力のある人への承継の可能性を
検討します。

(4)他社への承継
他社へのM&Aの可能性を検討します。

(5)社会への承継
会社が既に社会における役割を終えたと判断した場合、
会社を清算することを検討します。会社を清算することも、
価値あるものを社会へ承継することであると考えると、
事業承継のひとつのかたちといえます。

できれば、事業承継の専門家に相談しながら、上記の可能性を
十分検討した上で、どれが最も企業にとってふさわしいかを判断し、
対策を立てることが重要です。

 

 

Q&Aシリーズ4    社員との関わり方

Q.後継者として社員とどのように関わればよいですか?

私は、まだ20代後半ですが、社長の長男で会社の後継者と目されています。
事業承継を控え、リーダーシップを発揮していかなくてはならないと
思っているのですが、社員とどのように関わっていけばよいでしょうか。


A.社員の期待に応えられる自分をつくることから始めてください。

どのように社員と関わったらよいか、悩んでいる後継者は少なくありません。
しかし、関わり方ばかりをスキルとして身につけようとしても、
社員と良い関係を持つことはできません。

社員との関わり方を考える前提として、社員の期待をしっかり認識して、
その期待に応える自分をつくっていくことが重要です。


社員は、後継者であるあなたに、何を期待しているでしょうか。

おそらく、社員は、後継者であるあなたが、
近い将来しっかりとした経営者となり、企業をしっかりと経営し、
良い企業にしていくことを期待していることでしょう。

その期待に応えられる自分をつくることから始めてください。


まず、自分自身の想いを再確認してください。
あなたは、将来、経営者として企業をよりよくし、
社員に幸せになってもらいたいという想いを、強く持っているでしょうか。

次に、自分自身の経営者としての能力を再確認してください。
社長の長男であるというだけでは、次期経営者としてふさわしいとは
認められません。認められるためには、あくまでも、経営者としての
実力が備わっていることが不可欠です。


しかし、リーダーシップを発揮しようと気負いすぎても、
実力以上の力は発揮できません。
大事なことは、現在の自分の実力を客観的に把握すること。
そして足りない部分を徐々に補っていく努力を続けることです。

社員は、経営者としての能力を身につけようと努力し、
良い企業にするために、しっかりと経営をしていこうとするあなたの姿勢を見て
この人と一緒に働きたいという意欲を持つものではないでしょうか。


まずは、自分自身のあり方を律していく。
これがリーダーシップを発揮する上で、重要な要素であることを認識しましょう。

その上で、社員との関わり方のポイントとしては、
気負いすぎず、自然体で接してください。

ともに会社を良くしていくパートナーであるという意識で、
自分から社員に関わっていく姿勢も大切にしていきましょう。

 

 

 

 

後継者の知恵習得シリーズ 「リーダーシップ」

後継者の知恵習得シリーズの第3回として、後継者の「リーダーシップ」について、問題提起させていただきます。

はじめに、企業の「人事」を語る上で、必須である経営者の「リーダーシップ」
について、簡単に解説しておきます。
「経営用語の基礎知識」では、「リーダーシップ」を以下のように定義しています。



「リーダーシップ (Leadership)」

 ▼「経営用語の基礎知識」での定義

企業変革の際に
変革を指揮するトップや、変革を支えるミドルなくてはならない能力 
  

環境は絶えず変化していくわけですから、企業が生き残っていくためには、
経営者は環境変化に適応し、企業自体を変革していかなければなりません。
すなわち、このリーダーシップの定義は企業変革を前提としたものとなっています。
ここで、もう少し噛み砕いたリーダーシップの定義を考えてみたいと思います。 


「リーダーシップ」とは、一般には、リーダーとしての素養・能力・統率力のこと
であり、リーダーシップの理論では、以下のように定義されます。

「リーダーシップ(Leadership)」

 ▼「リーダーシップ理論」での定義

   人を通して課題を達成していくこと 


この定義を分解すると、「人を通して」という部分と「課題を達成していくこと」
という部分の2つに分けられます。

つまり、「課題を達成していくこと」がリーダーシップの目的であり、
「人を通して」とは、その手段と捉えてもよいでしょう。 

この2つの切り口は、時代がいかに変わろうとも変わることのない
「リーダーシップの普遍の2軸」であると考えられています。(下図)

 
 
この定義から考えると、リーダーは、この2軸の両方を兼ね備えていなければならないということになります。
 
 
(1) リーダーは、業績に対する関心を強く持つとともに、人に対する関心         
   を強く持たなければならない。

(2) リーダーは、Pパフォーマンス行動(業績達成行動)をとるとともに、
   Mメンテナンス行動(組織維持行動)をとらなければならない。

(3) リーダーは、構造作りをするとともに、配慮(思いやり)を示さねばなら       
   ない。 
(4) リーダーには、IQ(インテリジェンス)が必要であるとともに、
   EQ(エモーショナル)が必要である。
 

リーダーは、上記のようなことが求められるわけです。


  
 1.「リーダーシップ」は後天的な能力

あなたは、社員から次世代のリーダーとして信頼されていますか?
もしかして、頼りがいのない後継者と思われていないでしょうか。 
組織のリーダーは、人を通して課題を達成していくことが求められます。              
自分ひとりだけでは、何事も為し得ません。                             

しかし、経営者としての知識も経験も豊富でないかもしれないあなたが、                      
いかに社員を統率していけばよいのでしょうか。 

それには、リーダーシップの鉄則を学び、自分自身を知った上で、                  
リーダーシップを少しずつ体得していけばいいのです。                       

幸い、リーダーシップは先天的な才能ではありません。                       
リーダーシップは、後天的に身につけることができます。                 
リーダーシップに自信のないあなたも安心してください。                            
これから、真のリーダーシップを身につけていくことが可能なのです。


2.後継者が陥る「リーダーシップ」の落とし穴

特に後継者に見受けられる、リーダーシップの落とし穴について
述べていきましょう。

(1)リーダーシップの2軸のどちらかに偏ってしまう 

あなたはリーダーシップの2軸を、両方とも押さえているでしょうか?
多くの後継者は、リーダーシップの2軸の意識がありません。
無意識のうちに、2軸のどちらかに偏ってしまいます。

「課題・仕事の軸」が強く、「人・組織の軸」が弱い後継者 

いわゆる「やり手」といわれる後継者に多いタイプです。

業績を上げるために、自分自身一生懸命仕事に取り組みます。
社員にどんどん指示・命令します。
反面、人間的配慮や思いやりに欠けるところがあり、社員の話を聞きません。
社員から慕われず、社員の自主性を引き出すことができません。

職場はぎすぎすした雰囲気となり、社員が定着しません。
業績が良いときはいいのですが、一旦業績が下がり始めると、
いくら挽回しようとしても、社員の協力が得られず孤立してしまいます。

「人・組織の軸」が強く、「課題・仕事の軸」が弱い後継者 
 
いわゆる「いい人」といわれる後継者に多いタイプです。

社員の状況や気持ちに配慮し、社員と良い関係を築こうとします。
反面、業績への関心が薄く、業績を上げるための力強い行動は見られません。
社員と少しでも葛藤があると、すぐ妥協してしまい、方針が徹底しません。

このような企業は、同じ目的に向って力を結集する集団というよりも、
仲良しクラブのようになってしまいます。
このような後継者は、当然、業績を上げることができません。
結果として、社員からの信頼も得られず、
社員と良い関係を築くこともできなくなってしまいます。
 
 
(2)親父や名経営者の物まねに陥ってしまう
  
後継者の中には、親父さんそっくりの言動をとる方も見受けられます。

もちろん、親父さんのリーダーシップを、ずっと傍で見ているわけですから、
自然と似てくるのも当然かもしれません。
しかし、親父さんと同じ口調や態度で社員に接している後継者を見ると、
違和感を感じる場合もあります。

本人は全く違和感を感じていないかもしれませんが、
年齢も経験も異なる後継者の言動としては、無理のある場合があります。

社員は黙っていますが、心の中では
「なぜ、この若造に、このように偉そうに言われないといけないんだ」
「形だけ真似たって、威厳なんか感じないよ」
などと感じていることがあります。

また、名経営者の話を聞いたり、書籍を読んだりして、その言動を真似る後継者もいます。

もちろん、そのような努力は評価すべきですが、
自分自身の身の丈やキャラクターにあっていないと、形だけの物まねに陥ってしまいます。
 
 
(3)親父を反面教師にしすぎる
 
逆に、親父さんを反面教師にしすぎる後継者もいます。

つまり、親父さんのやり方に反発し、
「自分は親父のやり方だけは絶対とらない」
と考えて、極端な言動に走るケースです。

例えば、親父さんのワンマンぶりが気に入らない後継者が、逆に、
社員の考えや気持ちに配慮しすぎるスタイルになってしまう場合などです。

親父さんを反面教師にしすぎる結果、バランスの偏った
リーダーシップ行動に陥ってしまいます。
 
 
(4)リーダーとして気負いすぎる
 
リーダーとはこうあるべきだ、という思いが強すぎて、
気負いすぎている後継者もいます。

もちろん、リーダーである自分を意識するのはよいことですが、
気負いすぎても空回りしてしまいます。

社員は、万能のリーダー像を期待しているわけではありません。
もちろん将来、リーダーとして成長していくことを内心期待しているでしょうが、
今すぐにすべてを望んでいるわけではありません。

それをわからず、気負いすぎたり、強がったりしても、
真のリーダーシップは発揮できません。 


3.「リーダーシップ」のツボ

それでは、「リーダーシップ」に関して、後継者はどのように取り組むべきなのか、
そのツボを紹介します。

(1)業績にシビアになる
 
リーダーシップの第一歩は、業績にシビアになることです。

いくらきれいごとを言っても、業績が上がらなければ企業は存続できません。
極めて当たり前のことです。
この冷徹な事実に、まず目を向けることが重要です。

業績にシビアになるとは、短期的な業績を意識することだけではありません。
中長期的に業績の上がる企業にするために、どういう戦略をとっていくのか、
どういう仕組みを作っていくのか等を徹底的に考えて、実現していく執念を意味します。
業績が上がってこそ、社員は飯を食うことができるのです。

この後継者についていけば、飯が食えるという感覚を与えることができるか
どうかが、後継者のリーダーシップの試金石といえます。
 
 
(2)コミュニケーションの能力を磨く
 
後継者は、コミュニケーションの能力を磨いていく必要があります。

近年、個人の能力を最大限に引き出し、自立型人材育成のために
欠かせないコミュニケーション・スキルとして、コーチングが脚光を浴びています。
そのスキルを学ぶことは、非常に有益です。
まずは、コーチングのスキルのうち、「傾聴のスキル」と「承認のスキル」
を押さえておきましょう。

「傾聴のスキル」とは、話を聴くためのスキルです。

傾聴とは、単に言葉を聴くだけではありません。
相手の気持ちや感情など、全てに関心をもって聴くことです。

社員の話を途中で遮らずに徹底的に聴くことにより、
社員の考えていることや、感じていることがよくわかるようになります。
同時に、社員も信頼を寄せてくれるようになります。

「承認のスキル」とは、相手の成長や変化を認めて、相手に伝えるスキルです。

人は誰でも、正当な評価をされたいという、承認欲求を持っています。
社員の働きに感謝の意を表したり、良いところを認めていくことによって、
社員は満足感を得られ、モチベーションが上がります。

一度、コーチングのスキルを学ばれることをお勧めします。
 
 
(3)自分自身のリーダーシップスタイルを徐々に創る
 
リーダーシップには鉄則がありますが、リーダーシップスタイルは、
個々の経営者によって異なっており、ひとつの型があるわけではありません。
後継者であるあなたは、親父さんや名経営者と言われる人たちからリーダーシップを学ぶことはできますが、そのスタイルをそのまま踏襲できるわけではありません。

まず、自分自身の強みと弱みを知ることから始めてください。
 
あせる必要はありません。

リーダーシップを少しずつ体得していこうとする姿勢こそが、
求められていると考えてください。
「リーダーシップの普遍の2軸」等の鉄則を押さえながらも、あくまでも、
自分自身のリーダーシップスタイルを徐々に創っていけばよいのです。


 

後継者の知恵習得シリーズ 「財務諸表」

後継者の知恵習得シリーズの第2回として、「財務諸表」について、問題提起させ
ていただきます。
 
企業の「財務」を語る上で必須である「財務諸表」の概要について、簡単に述べておきます。「経営用語の基礎知識」では、「財務諸表」を以下のように定義しています。


  「財務諸表(FINANCIAL STATEMENT)」

   ▼1年間
経営活動の成績財政状態をまとめた報告資料
   ▼企業の客観的な姿を知ることができる。
 


「財務諸表」は、ある時点での財政状態と一定期間の経営活動の成績をまとめ、
外部の利害関係者に正しく報告するための資料です。
会社法や証券取引法などに定められたルールにしたがって作成され、
企業の真の姿を映し出す鏡のようなものです。

 「財務諸表」は主に、

(1) 「貸借対照表」(BALANCE SHEET:B/S)
(2) 「損益計算書」(PROFIT & LOSS STATEMENT:P/L) 
から構成されます。

(1)「貸借対照表」は、ある時点(決算日)における企業の財政状態(ストック)を示すものです。企業がどこから資金を調達しているかを示す「負債」と「純資産」を右側に表示し、その資金をどのように運用しているかを示す「資産」を左側に表示します。左右がバランスすることから、「バランスシート」とも呼ばれます  

(2) 「損益計算書」は、一定期間(会計期間)の資金の流れ(フロー)を示すものです。企業がいくらの「費用」をかけて、いくらの「収益」を上げ、結局いくらの「利益」が残ったのかという、経営活動の成績を表示します 
 
 
 
  「財務諸表」の一例として、カルピス株式会社のものを紹介しておきます。 

 



1.「財務諸表の重要性」

後継者であるあなたは、「財務諸表」が読めますか?

「財務諸表」の重要性を理解していますか?

企業は、最終的には数字で評価されます。
その数字を作り出すのが経営者の仕事です。
その経営者が、数字がわからないでは務まりません。
経営者が、「財務諸表」に通じていることは、得意不得意の問題ではなく、
絶対条件なのです。          

たしかに、あなたの親父さん、御袋さんは、「財務」の知識に疎く、
これまで皮膚感覚で経営してきたかもしれません。
しかし、後継者であるあなたは、こういう芸当をあてにしないほうがよいでしょう。
しっかり「財務諸表」を勉強して、「財務」を繰れる経営者をめざしましょう。

枝葉末節な知識に振り回されることなく、「財務」の本質を掴んだうえで、
「財務」の感覚を磨いていけばいいのです。


2.後継者が陥る「財務諸表」の落とし穴

特に後継者に見受けられる落とし穴について、述べます。

(1)「財務諸表」を見たことがない

あなたは、自社の「財務諸表」を見たことがありますか。

さすがに、すでに代表者になっている後継者のほとんどは、
自社の「財務諸表」を見ているでしょう。

まだ代表者になっていない後継者の中には、
自社の「財務諸表」を見たことがない人が、意外と多いのも事実です。
後継者の道をスタートさせていながら、自社の「財務諸表」を見たことがない
というのは、大きな落とし穴といえます。
単に「財務諸表」を見る機会がなかったという場合もあれば、
親父さんから見せてもらえないという場合もあるでしょう。

しかし、自社の財務状況や業績は、「財務諸表」に集約されています。
その「財務諸表」を見たことがないということは、後継者としての
役割やスタンスから、かなり逸脱していると考えるべきです。 


(2)「財務諸表」が読めない

あなたは、「財務諸表」が読めますか。

たしかに、「財務諸表」は、日ごろ使わない専門用語が並んでいます。
慣れないと分かりにくいといえます。
よって、「財務諸表」に苦手意識を持ち、勉強を避け、
理解しようとしない後継者も多く存在します。 

しかし、「財務諸表」の読めない経営者は、計器の読めない
ジャンボジェット機のパイロットと同じです。
目に見える景色と、感覚だけで飛んでいるようなもので、
いつ墜落するか分かりません。 

将来、経営者となる後継者にとって、「財務諸表」が読めないことは、
致命的な欠陥と考えるべきです。


(3)「財務諸表」を身に感じない 

あなたは、自社の「財務諸表」を身に感じますか。

自社の「財務諸表」を見て、それが知識的に読めたとしても、
その「財務諸表」を、自分の身に感じることのできる後継者が
少ないのも事実です。

「財務諸表」は、単なる数字の寄せ集めではありません。
その数字には、必ず、その元となる実際の資産・負債や、
企業活動の存在があります。

自社の「財務諸表」を読むときに、数字と実態が自分の中でリンクできなければ、
正しく「財務諸表」と関わりをもっているとはいえません。

「財務諸表」は、関係者みんなの幸福と不幸の源泉です。

後継者がそういった意味で「財務諸表」を身に感じることができなければ、
いくら「財務」の知識があろうと、本当の力とはなりません。


3.「財務諸表」のツボ

それでは、「財務諸表」に関して、後継者はどのように取り組むべきなのか、
そのツボを紹介します。

(1)自社の「財務諸表」を手に入れる。 

後継者であるあなたは、まず、自社の「財務諸表」を手に入れましょう。

通常、「財務諸表」は「決算書」と呼ばれます。
税務署に提出する、確定申告書の中に綴じこんであります。

社長に、「財務諸表」を見せてもらうようお願いしてください。
普通は、後継者であるあなたが勉強したいといえば、
喜んで見せてくれるでしょう。

もし見せてくれない場合は、何か問題があると言えます。
見せられないぐらい、財務状況が悪いということも考えられますし、
社長あるいは、あなた自身に何か問題があるのかもしれません。
いずれにしても、その問題を明らかにすることが必要です。


(2)自社の「財務諸表」を見る。 

自社の「財務諸表」を手に入れたら、ざっと目を通しましょう。
まず、貸借対照表で、資産と負債を確認しましょう。

どんな資産と負債がありますか。
純資産も確認しましょう。

資産合計はいくらですか。
負債・純資産合計と同じ数字で、左右バランスしていることを確認してください。                

次に、損益計算書で、売上と費用を確認しましょう。
利益が出ていますか。                  
それとも損失が出ていますか。

資産・負債・純資産・収益・費用・利益の大枠をつかんでから、
細かい項目を確認していきましょう。


(3)「財務諸表」の知識を身につける。 

自社の「財務諸表」を見て、その内容が理解できましたか。

やはり「財務諸表」を読むために、最低限の知識は必要です。
後継者であるあなたは、具体的な「財務諸表」の知識を身につける必要があります。
勉強したことが無駄になることはまずありません。
安心して勉強してください。

勉強するための時間と労力を掛けることが求められます。
まずは、書店で読みやすそうな簿記や会計の本を買って、読んでみましょう。
簿記や会計のセミナーに参加してみるのも良いでしょう。 

わからないことがあれば、親父さんや経理担当者、または、
会計士・税理士・中小企業診断士などの専門家に尋ねてみましょう。


(4)自社の「財務諸表」を身に感じる。 

自社の「財務諸表」の数字を、リアルに感じられるまで、
その項目の数字と実態をつき合わせる努力が必要です。 

自社は本当に儲かっているのか、という収益性と、
潰れやすいのか潰れにくいのか、という安全性を、
「財務諸表」から感じとれるようになることが重要です。

自分自身・家族・社員・関係者が豊かで幸せになることを望み、
その基盤が「財務諸表」にあることを確認してください。

「財務諸表」は、関係者みんなの幸福と不幸の源泉です。

普段から「財務諸表」に関わりを持ち、「財務諸表」を自分の身に感じることが
できるようになれば、後継者としてひとつの段階をクリアーしたと言えます。



 

 

後継者の知恵習得シリーズ 「企業理念」

後継者の知恵習得シリーズ、第1回として、「企業理念」について、問題提起
させていただきます。
 
「経営用語の基礎知識」では、「企業理念」を以下のように定義しています。

「企業理念(CorporatePhilosophy)                                                           
経営者の経営哲学、企業経営や組織の基本像(原点)を表したもの。
       社員一人一人の業務にまで浸透させることが大事。
 
「企業理念」は、英語で「コーポレート・フィロソフィ」と表されますが、企業経営者の経営哲学や価値観等をまとめたものです。「経営理念」という言葉もあり、
厳密に両者を区別する人もいますが、通常は、ほぼ同じ意味で使われます。

「企業理念」の一例として、オムロングループのものを紹介しておきます。
オムロングループでは、2006年5月、「基本理念」・「経営理念」・「経営指針」・「行動指針」の四項目からなる新たな「企業理念」を制定しました。




                                             (オムロングループ ホームページより掲載)


「企業理念」が重要であることは、数々の事例が証明しています。
しっかりした企業理念が内外に浸透することで、成長発展した企業の例は、
数多く挙げることができます。よって後継者が「企業理念」をまとめたり、
社員に浸透させるための取り組みは非常に重要といえます。

その反面、単に「企業理念」を制定しただけでは、何の効果も無いばかりか、
後継者が、軽々しく「企業理念」を語ることは、害をもたらすことさえありえます。



1.「企業理念」

「企業理念」を、その価値から3つに分類してみます。


(1)価値のある「企業理念」

企業の目的・あるべき姿・経営のやり方などが
「企業理念」として凝縮された形で表現され、経営者が本当にそれを信じている。
対外的には顧客、株主、取引先、地域社会に、
対内的には社員に浸透し、企業の発展の原動力になっている場合です。


(2)価値のない「企業理念」

企業を訪問すると、「社会貢献」とか「創造の精神」などの「企業理念」が
額に入れられて掲示されています。その額は十年以上掲げられていますが、
社員の誰も気に留めておらず、埃をかぶっています。

経営者自身も、その額について話しをすることもなく、意識の外にあります。
大掃除のときには邪魔になりますが捨てるわけにもいかず、
とりあえず掲げたままになっています。

こういった「企業理念」は、毒にも薬にもなりません。


(3)害のある「企業理念」

経営者が、朝礼や会議などで話したり、社員全員で唱和する「企業理念」が、
現実と矛盾していることがあります。

例えば、「お客様第一主義」と掲げながら、実際は、
お客様のことをぞんざいに扱っていたり、自社の利益のみを優先して
お客様を単なる利益をもたらすだけの存在と考えている場合です。

また、気持ちでは確かに「お客様第一主義」と思っているのですが、
それを行動に表すことが全くできていないケースです。
 
このような「企業理念」は価値があるどころか、害のあることに気づくべきです。        
社員からみると、経営者がうそをついてるという感覚すら持ちます。
結局、経営者の言行不一致がクローズアップされてしまい、
従業員のモチベーションを下げる要因ともなります。


2.後継者が陥る「企業理念」の落とし穴 
 
特に後継者に見受けられる落とし穴について、述べます。


(1)身の丈に合わない発言

まだ知識も経験も少ない若い後継者が、経営理念について、
したり顔で社員に語りかけている光景を見ることがあります。
本人にとっては、経営者として当然の言動であると思っていますが、
社員は、なぜか違和感を感じます。

もちろん、社員は黙って聞いていますが、内心どのように思っているか
わかったものではありません。
「なぜ、こんな若造にえらそうに言われないといけないんだ!」
「社会貢献なんて言っているけど、本当にわかって言ってるんだろうか。
そんなことより、先にしっかり儲けて、給料上げてよ。」
という声が聞こえてきそうです。
   

(2)先走った「企業理念」づくり

自社に、しっかりした「企業理念」が無いことに気づき、わが社も
「企業理念」を制定しなければと、「企業理念」づくりに取り組む
後継者もいます。経営の勉強をしている後継者に多いケースです。
 
自社がどのような目的で存在し、どのようにあるべきかを
考えること自体は、後継者にとって不可欠なことです。

しかし、自社の現状をよく理解せず、今後の自社の市場における方向性
などを吟味しないまま、抽象的な「企業理念」を先行して発表してしまうことは、
非常に危険です。

なぜなら、後継者の未熟さとともに、事業方針や経営戦略の無さが、
かえってクローズアップされてしまい、社員が逆に不安に感じる可能性が
高いからです。


3.「企業理念」のツボ

「企業理念」は、企業の目的そのものや価値観を表す、まさに企業の根幹です。
だからこそ中途半端に扱ってはなりません。

それでは、「企業理念」に関して、後継者はどのように取り組むべきなのか、
そのツボを紹介します。


(1)自分の身の丈を知る

後継者であるあなたは、まず、自分自身を見つめなおすところから
スタートするべきです。

年齢・経験・貫禄と、周りからの印象を十分認識しましょう。
年若く経験の浅い自分自身の身の丈を知り、謙虚な姿勢で
「企業理念」に向き合うとよいでしょう。
 
その上で、背伸びをせず、本当に自分が納得して、
身に感じていることのみを発言してください。

「まだ、自分はよくわからないけど、やっぱりこういうことを
大事にしていきたいと思っています。」
というような姿勢で、人にその思いを伝えましょう。

後継者は創業者とちがって、「俺についてこい」式の
リーダーシップはとりにくいものです。

それよりも「企業理念」を旗印にして、
「自分もこの企業理念を信じて頑張っていくので、みなさんも協力してほしい」
という姿勢が望ましいと思います。


(2)「企業理念」の前に「経営戦略」

後継者であるあなたは、企業理念の策定を手がけるよりも、
まずは経営戦略をしっかり打ち立てるべきです。

自社の強みと弱み、及び外部環境を幅広く把握・分析した上で、
自社が生き残るための具体的な経営戦略(商品戦略・市場戦略
・販売戦略・財務戦略・人事戦略等)を練ることが大切です。

「企業理念」の策定をあせる必要はありません。
経営戦略を構築し、それを実行に移していくプロセスの中で、
おのずと「企業理念」が見えてくるものです。


(3)「企業理念」の前に「自己理念」

企業は、経営者の器以上には成長しません。
ゆえに、企業理念の前提として、後継者のあなた自身が
どのようになりたいかという「自己理念」の確立が不可欠です。

あるべき姿から自己を反省し、常に自己革新していく姿勢が大切です。
しっかりした「自己理念」を持ち、人間的に日々成長するあなたこそが、
真の「企業理念」を構築できるのです。

 

 

 
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